はじめてづくしのふもとっぱら

だんごまん(BETA)

2013年12月12日 20:42

私の中では手を出してはイケない、禁断のキャンプ道具があった。
それは薪ストーブ。積載に問題のない車とは違ってバイクで持ち運ぶならフォールディングタイプとなる。しかし、需要と供給のバランスのためか、海外のサイトで見ても結構なお値段。アルミ板を丸めるシリンダータイプなら自作出来るかも、と試行錯誤で設計してみたり、むしろテント内で火を起こせるティピーを自作してみようか、とも思った(もちろん、そういったタイプの市販のテントはあるが高額)。

そんな折、快速旅団で高価なアルミ製(Ken-G)よりも安価なスチール製薪ストーブ(Hog)が発売された。自作見積もりよりも3割くらい高い。う~む。薪ストーブをインストールする床がないタイプのテント持ってないもんなぁ。そもそも私は「ペグ」なるモノをほとんど使わない、全天候不対応タイプ。そんな折、ドッペルからトンガリテントが新発売キャンペーンで激安で売られていた。

(これはキャンプの神のお導きだ)

と直感した私は両方とも購入。しかし、その偉大なる意志の啓示も虚しく、その後私はバイク封印生活に入ってしまった。


そして、時は流れ。私は再びバイクに乗っている。

天気予報では「今週末大寒波が来るでしょう」。

時は来た。

初めては絶好のロケーションで試したい。そうなると、今まで料金のために敬遠していたキャンプ場「ふもとっぱら」しかない!

中央道では1時間ちょっとで行ける場所だが、今回は3時間以上かかる道志経由でトコトコ行き、バイク自体を楽しむことに。
土曜でも季節なのか遅く出たからなのか、道は終始流れている。

いつもの癖で朝日屋で一束250円の薪を二束購入。(これが後に失敗だと勉強することに)


薪を積むと一気に旅バイクの顔。


道の駅道志では多くのバイカーがいたのですが、キャンプバイクは私だけ。鳥類に混じったコウモリの気分。


この日はチートデイで量食べていい日。ここで家から持ってきたパン(3つ)を食べる。ライダー達が仲間と一緒に暖かい豚汁をすする横で、一点を見つめ、一心不乱に一人冷えきったパンをいただく。甘いパンも混じっていたのだが、少し塩味がした。

腹がパンパンになった所で、ここで浮かせた金を使う場所に。

久しぶりに見たツーリングマップルに乗っていた山崎精肉店。金華豚ハムが有名とのことだが、ハムは最近自家製しか食べないのでここは馬刺しの購入を試みる。しかし、「特上」はなんとなくわかるが、「特選」だの「ハラミ」だの、値段が同じでも色々種類がある。なので、ここはお手すきの元ヤンっぽい若い店員さんにオススメを聞いてみる。

「あ、すいません、ハラミと特選だと、何が違うのですか?ほら、臭みとか食感とかの味が違うとか。色々種類があるから・・・。どちらがいいと思います?」(私)

「ああぁ~、味は全部一緒っすよ。」(元ヤン風店員)

「へ?同じなんですか?」(私)

「同じ1頭から取るからどれも全部一緒っす。」(元ヤン風店員)

(へ?馬刺しというのは筋肉や脂肪の関係ない、ある一定の部位しか食べないモノなのか?)

過去の記憶を探りながら商品と店員さんを交互に確認。気まずい空気を感じる中、元ヤン店員はリング上の亀田大毅のような顔でこちらの出方を待っている。

「じゃ、じゃあ、ハラミで」


この量で600円。100gちょっとかな。納豆についているタレのような大きさの絞りにんにく付き。こんな贅沢品、普段は絶対買わないのに。これだから旅は怖い。

ここからは高速ワインディングで見事な富士山の絶景を想像しながら「ふもとっぱらキャンプ場」へ直行。

受付でバイク料金2000円を払うと、バイクのナンバー下4桁をその場で係員さんが紙に手書きして
「明日の朝、この紙を渡してください。証明になりますので」
と場内の説明も受ける。

気温。
そんなに寒くない。
場内。
結構人多い。(ソロキャンは私だけ)

なんか拍子抜けな感じだが、ここには絶景があるぜ。



あれ?富士山見えない・・・。
はいはい、薄々わかってましたよ。なんせ富士山の周りを走ってくるんだから。でも、到着時には奇跡的に快晴になる、と根拠なく信じてたり。奇跡は起きないから奇跡と言うのにね。

気を取り直して設営開始。初めての参天。勘で設営するから途中でセンターポールが倒れたりしてなかなか決まらない。どんどんテントの場所は移動していき、気が付くとシカのウンチスポットにしかペグを打つ場所が無くなったりして。また全部ペグを抜いて。そうこうしているうちにやっと


設営出来た!
煙突ポートは自作。縫いは実家のミシンで。


まだお初があった。それはコット。これも快速旅団で安い時に購入しっぱなしだったもの。もっと安いモノを試したことがあるのだが、あまりにも横幅が狭くて体が折りたたまれてとても寝れたもんじゃなかった。当時おデブだったこともあり、耐重量100kgとなっていたこのベアコットしかある意味選択肢が無かったとも言える。

これが組みあがらない!パーツがはまらない。堅い、堅いよぉ!
鬼の形相で万力の力を込めてなんとか組み立て終了。そしてふと頭を上げると


富士山見えてる!

「よくぞ一人でウンチにも負けず設営出来たのぉ。ご褒美じゃ」

とキャンプ神からの声が聞こえる。ありがとうございます!

日が落ちると急激に気温が下がり、寒いというよりも、素手は痛いレベル。


薪ストーブの組み立ては煙突に手こずったが、なんとか終了、そして火入れ。ほんのり暖かい。

まずはビールで先ほどの馬刺しを食す。新鮮でまったく癖も匂いもないのだが、逆に言えば食感だけとも言える。ま、生肉ってそういうモノかも。特に高揚する気持ちが湧かないのは私の価値観が変わったんだな。

次の料理をどうするか。今回はせっかくの初薪ストーブなので、これだけを熱源として完結した料理をしたかった。そうなると、考えられる定番としては鍋を使う「煮物・汁系」が最適だ。

だが、しかし。

独り身あるあるなのだが、私の冬の食事はほぼ煮込み・汁料理だ。様々な味替えをして、一つの煮込み料理を何日も延命させるのが腕の見せ所である(夏は延命措置よりも腐敗が早い)。そんな孤独のグルメをここで再現する必要は無いし、したくない。

しかし、この安定しない熱源で出来る料理は他にあるだろうか。

考えました。そして答えがコレです。


チーズフォンデュ。


ワインを準備してしばし待つ。
ここで火力を上げようと薪をくべたら大失敗。湿っている薪は大量の煙を放出して人間燻製状態に。煙突のダンパーを全開にして、テントの入り口を開けて換気。
寒い。寒すぎて酔が一気に冷める。
薪ストーブの先輩方のブログでよく「湿った薪がなんちゃら」というフレーズを見ていたが、それは火が付きにくいだけなのかと思っていた。焚き火と違い、薪ストーブだと湿った薪は燃え上がらずに煙を出しながら炭化していくのだ。ならば乾燥させよう、とその後は数本ずつ薪をストーブ天板に置いて乾燥させることにする。

チーズがグツグツいってきたので


ソーセージはストーブ内に直接突っ込んで焼いて


フォンデュフォンデュ~(しゃぶしゃぶ、みたいな)。

う、うまし!
ピュッとソーセージの肉汁がはじけて熱々のチーズとお口の中でランデブー。

(はふっ、はふぅ、熱っ!ふぅ~)

熱さで口内の皮がベロベロになってしまっているが、気にしていられない。だってうまいんだもの。その前に、酔っぱらいだもの。

具材は他にブロッコリーとパンを用意。パンにはチーズがたっぷり付く。夢中で完食。


お楽しみはコレ。残りの焦げたチーズをこそげ取りながら食べると、これまたうまい。
ワインがガンガン進む。
100m以上離れた場所の若者男女グループのユーロビートと「フォー!」という合いの手の叫び声が気になっていたのだが、もう、どうでもいい。
ほぼ記憶を無くして早めの就寝。

夜中の3時、静寂の中突然若い女性の空気を切り裂く笑い声で起こされる。例の若者グループだ。若い女性の高い声は響く。泥酔して寝たとしても常に臨戦態勢を忘れない自称ローン・ウルフな私は異音に敏感だ。最近のテレビの影響だろうか。ワイプで抜かれるタレントのように、その子もデカイ声で笑う時手も一緒に叩くため、音の体積は2倍になる。

(それにしても、手を叩く音だけでも若い女性とわかるもんだな。乾いた高い音。それでいて潤いを感じる響き。手の大きさまで想像出来るようだ。)

そんな事を考えながらも音の発生源が寝たであろう5時半頃までウトウト、はっ!状態で寝られず。

うう、そろそろ6時か。もう起きよう。

薪ストーブに火入れをして富士山の確認。

残念すぎる光景。マジか。だがテントからの煙の画はいい感じ。


せっかくなので、煙が良く見える方向で撮影。


朝のコーヒーはカルディのインスタント。ゴミが出ないし、そこそこ美味しい。

ここでトイレ。こんな時間なのでまだキャンプ場は静まり返っている。のんびり歩いていると、トイレ横炊事場から水汲みをした3人家族とばったり。
私はどのキャンプ場でも、話しかけることはあっても、話しかけられることは皆無。今回も完全ステルスだと思っていた所、

「おはようございます~」

と挨拶してくるではないか。

子供は幼稚園ぐらい?両親は私よりも若いかな?そんな幸せそうな家族の爽やか挨拶に

「お、おは、あにゃにゃにゃでございます!」

とびっくりしてキョドってしまう。ああ、今朝曇りで見えなかった日の出にかわって、こんな所に太陽が。眩しい。
※「話しかけられる」と「挨拶」は根本的に違うよ、というツッコミはやめていただきたい。私からすればどちらも無、なんだから一緒よ。

その後、残していた薪の消費に3時間以上かかる。その間読書でもしてのんびりする。なるほど。バイクキャンプは朝一で出発するもんだ、と思っていたが、こういった時間もいい。しかも幕内はかなり暑いのでTシャツ1枚でも汗が出る。贅沢な時間だ。

さて、薪の消費が終わった所で煙突のチェック。

ススはこんな感じ。あれだけ煙が出たので真っ黒。


チークブラシでスス取り。これはマキノ高原で拝見した先輩のマネ。


床へのダメージチェック。うう、ちょいこげてしまった。すいません。底上げは次回の課題。


自作の煙突ポートもしっかり機能していた。幕は4箇所火の粉で穴が空いたが、ま、これは仕方がない。


撤収作業はスムーズに終り、場内の誰よりも早く出発。私の撤収作業中にやっとテントから出てくる人もいるぐらい、ここは時間がゆったりしている。チェックアウト時間の設定がかなり遅いのもうなずける。こういったキャンプスタイルもあるのだな、と改めて勉強になった。


道の駅なるさわに向かう予定だったが、寄ったことのない至近の道の駅朝霧で停車。バイクは隼やハーレー、GSなどが停車していて、日本人観光客が近くて眺めていたが、私のトランザルプは見向きもされない。唯一、中国人バスツアー客からは大評判で一緒に写真を撮る人もいた。
やはり日本では人気の無いバイクなのか、トランザルプ。この中では一番かわいいと思うのだが。

ここではキャベツ一玉(160円)を購入。キャベツは現在東京平均価格280円以上なので大変助かる。
ちなみに私の頭の中には日常食材の時価がデータベース化されている。これも独り身あるあるね。先を進む。


多分、小学生以来の樹海の遊歩道。この駐車場と入り口はテレビの自殺特集などでよく出てくる所。私が止めた場所の横には「巡回車」と書いてあるバンが停車している。せっかくなのでちょっと入ってみる。入り口の説明を読むと先に風穴があるらしい。私は遊歩道がU(遊)の字になっていて、その頂点に風穴があるのだろう、と勝手に思い込んで進もうとすると・・・。

「こんにちわ~」

と、巡回バンから降りたおじいさんが挨拶をしてくるではないか。

「あ、こ、こんにちわ」

後ろからの不意打ちにびっくりして挨拶を返す。これから中を巡回するのかな、それとも、私が自殺しそうに見える?と懸念して立ち止まっていると、おじいさんは私を抜かして行く。よかった。私は関係ない。やはり巡回なのだ。
行動スケジュールがあるのかな、と思っていると入り口からほんの数歩の場所でコースから外れ樹海奥へ進むではないか。

なるほど、樹海に分け入る巡回コースがあるのか。それにしても入り口から近すぎるよなぁ・・・。と眺めていたら、おじいさんは数歩で立ち止まって遠くを見つめる。

(何か発見したのか?)
緊張して私もおじいさんが見つめている遠くを見てみる。

何も無い。

おじいさんを再度見ると立ちションをしていた。遠くを見ていたのはパンツのジッパーを下ろす初動だった。

ここの駐車場には綺麗なトイレがある。それでも樹海内で用を足す。しかもたった一人の観光客の目の前で。私はここに何か安全を祈願する願掛けのようなモノを感じた。そうに違いないのだ。そして目が合ったやいなや、私は押されるように奥へと進んだ。


誰もいない樹海。外気温は2度。おじいさんの視線を背中に感じながら奥へと進む。もう終わったかな。さすがに振り向けない。


結構歩いた。正直、この時点で既に飽きていた。しかし、歩いた距離を考えると引き返すのも億劫。がんばってUの字の頂点にあるだろう、風穴を目指すこととする。



同じような景色の連続。だんだん自分が異次元に迷い込んだのでは?と思ってきた。この道はさっき通ったのでは?ここは誰?私はドコ?な感じ。
また、徒歩はバイクの重装備なので暑い。上着前面のジッパーというジッパーをすべて全開にする。その時に気づいたのだが、半ケツ状態だった。というのも、ユニクロのイージーパンツのサイズはXL。ダイエットで痩せてしまった私には緩くなってしまって、歩く振動でずり落ちてしまっていたのだ。付属のベルトを最大に締めても緩い。仕方がないので両手でパンツを持ち上げながら歩くことに。

プロテクター付きの上着群の前全開で両手でパンツを掴みながら歩く。その姿はなんかガラが悪い。
「おうおう?お前やんのかコラ!」
とちょっと言ってみたら自然と足がガニ股なる感じ。観光客がいないことが不幸中の幸い。人畜無害を売りにする人間にはとても見えなかったに違いない。


また分岐点が。
ん?説明を読むと、今まで道中見てきた小さな穴達はみんな風穴みたい。なんだ。そういうことか。じゃ、これで終りなのか、と思ったら、下の方に施設っぽいものが見える。やはり風穴はあったのだ。


メンテナンスで休業中。それにしても看板にはありったけの宣伝文句が書いてある。「世界遺産登録!」って。ちょっとした語弊は気にしない。左上には後から付けたように小さく「パワースポット」と書いてある。商魂逞しい。こういったなんでもありな自画自賛、私も少しは見習わないと。そんな勇気をもらう意味では「パワー」スポットなのかも。

後ろを見るとすぐ目の前は先ほどの駐車場。こちらから入っていれば数分で終わったであろう観光だったのだ。

予定になかった散歩タイムで汗をかいたので、温泉に入ろうかな、と探してみる。家では冬でもシャワーなので足を伸ばせるお風呂はありがたい。
ただ、最近富士山周辺は観光地化されていて、温泉施設のリニューアル&料金UPが進んでいる。私のツーリングマップルにメモっていた安価な所も念のため調べてみると近年リニューアルして料金が上がってしまった、とグーグル先生から教えてもらう。しかし、まだメモは残っていた。


それがここ。葭之池温泉(よしのいけおんせん)。
葭池温泉前駅という駅まであるのに、マイナーな温泉。ここは1時間600円と値段は良心的だが長風呂派の私には時間がちょっと短い。だが、帰路を考えると疲れない程度に入る、という意味でいいかな、選んだ。


こちらの趣のある旧宿はもう使ってない。デブネコが座っている受付に行くと、

「ただいまキャンペーン中で、1時間600円のところ、2時間500円です」

何のキャンペーンなのかまったくわからないのだが、予想外の嬉しい設定なので気にしないことにする。


廊下のドアを開けると


すぐお風呂。脱衣所と一体。お風呂はこれだけ。


天井は吹き抜けなので圧迫感はない。女湯と一体。「電球はナショナル」という看板が懐かしい。
これが「LEDは東芝」だと違った感じになってしまう。


洗面所にはなんと灰皿が!その昔、喫煙者が世界を支配していた近代の遺産だ。風呂場に私一人で良かった。もしここで吸われでもしたら・・・。想像するだけでも警察のお世話になりそうな妄想が湧いてしまうのが悪い癖。お隣女湯からはおばあさんがデカイ声で会話している。天井はつながっているため、否が応でも聞こえてくるのだが・・・。

これは日本語なのだろうか。少しの単語しか理解出来ない。方言なのか?一方的にしゃべっているが、相手は理解できているのか?もしかしたらこれも樹海の影響を受けて私の認識能力がおかしくなっているのか?ココは誰?私はドコ?

と再び錯乱しそうになったので1時間の長湯から出ることに。


休憩所もあり。誰もいないと思ったら、2箇所あるコタツにそれぞれ、すっぽり老人がハマって寝ていた。コタツ布団と一体化しているかの如く目をつぶって横たわるその姿は至福を通り過ぎて昇天しているように見える。


食事メニューもあり。わざわざ「一般的な吉田うどんよりも量が多いです」と注意書きもある。

ちなみに受付は
入店時→デブネコ
受付時→若奥さんっぽい人
お風呂から出て休憩所に行く時→旦那さんっぽい人
退店時→おばあさん

と短い時間にくるくる変わる。家族一丸となっての経営を感じる。全員他人だったらシフト組みが大変なことになりそうだ。

男性客はコタツ星人の老人一人(残りの一人は性別不明)と私が出る時に丁度入ってきた登山帰りっぽいソロの男性だけ。日曜の午後にこの状況、穴場というよりもちょっと経営が心配になる。是非皆さん、利用して盛り上げましょう。

さて、帰るか。高速を使うと時間は半分以下。だが孤高のライダーに下界の予定など無い、いや、いらない。むしろバイクを楽しもうではないか。

20号を使ってトコトコ帰った。


今回、初めて「滞在する」というキャンプもありだな、と思ったので次回更に試してみたい。



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